口腔がん手術後の再建で活躍する「遊離前腕皮弁」とは?
戸田市の歯医者、北戸田デンタルクリニックの米永です。当院では「これって口腔がんですか?」といった質問をよく受けることがあります
口腔がんが疑われる場合は口腔外科に紹介しますが、口腔がんでは、腫瘍を安全に切除するために、舌や口腔底、頬粘膜などを大きく切除しなければならないことがあります。そのため、「食べる」「話す」「飲み込む」といった口腔の機能を回復するために、皮弁(ひべん)を用いた再建手術が行われます。
数ある再建法の中でも代表的なのが、遊離前腕皮弁(free radial forearm flap)です。
この皮弁は1978年にYangらによって中国で初めて報告され、1982年にSongらによって世界に紹介されたことから、「Chinese flap(チャイニーズフラップ)」とも呼ばれています。
遊離前腕皮弁の特徴
遊離前腕皮弁の最大の特徴は、皮膚が非常に薄くしなやかであることです。そのため、口の中の複雑な形状にもよくなじみ、舌や口腔底などの再建に適しています。
また、栄養血管となる橈骨動脈の血管茎が長いため、首の血管と吻合する際にも十分な長さを確保しやすく、再建の自由度が高いことも大きな利点です。
血管の走行
遊離前腕皮弁の栄養血管である橈骨動脈は、通常2本の伴行静脈を伴いながら、腕橈骨筋と橈側手根屈筋の間を走行しています。この解剖学的特徴を理解しておくことが、安全な皮弁挙上には欠かせません。
術前に欠かせないAllen test
前腕皮弁を採取すると橈骨動脈を犠牲にするため、手への血流が尺骨動脈だけでも十分に保たれるかを事前に確認する必要があります。
そのために行われるのがAllen test(アレンテスト)です。尺骨動脈から手へ十分な血流が供給されることを確認してから手術を行います。
皮膚だけではない、多彩な再建が可能
遊離前腕皮弁は皮膚だけを採取するだけではありません。
必要に応じて
- 橈骨を含めた骨皮弁
- 長掌筋腱を含めた腱付き皮弁
- 前腕皮神経を含めた知覚皮弁
として採取することも可能です。
そのため、軟部組織だけでなく、骨や腱、感覚の再建まで幅広く対応できる、非常に応用範囲の広い皮弁として知られています。
手術で重要なポイント「パラテノンの温存」
前腕皮弁を挙上する際に最も重要なポイントの一つが、パラテノン(腱周囲組織)を温存することです。
皮弁を採取した後の前腕には、多くの場合、鼠径部などから採取した皮膚を植皮します。しかし、パラテノンが損傷していると植皮が生着しにくくなり、創傷治癒が遅れたり合併症の原因になったりします。
そのため、皮弁挙上ではパラテノンを丁寧に温存することが非常に重要です。
まとめ
遊離前腕皮弁は、口腔がん再建において長年にわたり世界中で使用されている、信頼性の高い再建法です。
「薄くしなやかな皮膚」「長い血管茎」「骨・腱・神経も含めて採取できる高い応用性」など、多くの利点を備えています。一方で、安全に手術を行うためには、Allen testによる血流評価や、パラテノンを温存した丁寧な手術操作など、いくつかの重要なポイントを理解しておく必要があります。
口腔がん治療では、がんを切除するだけでなく、術後の「食べる」「話す」という機能を回復させる事も非常に重要です。遊離前腕皮弁は、その機能再建を支える代表的な再建法の一つとして、現在も幅広く活用されています。















